雑誌ファースト・カンパニーの共同創立者アラン・ウェバーの新著が本日発売されました。英語のタイトルは Rules of Thumb: 52 Truths for Winning at Business without Losing Yourself。 Rules of Thumbの直訳は親指の法則ですが、通常、経験則と訳されます。オンラインで検索するとgoo辞書には語源に関して、下記の解説が出ていました。
Rule of Thumb: 経験則{けいけんそく}、経験{けいけん}に基づいて得られた法則{ほうそく}◆ 【語源説-1】大人の親指(thumb)の関節間の長さが約1インチであるため、大まかに長さを測るときに用いられた。◆【語源説-2】昔、ビールの醸造業者がビールの温度を測る際に、親指をチョットつけてみた。この方法は衛生的でなく、温度計ほど正確でもない。しかし、醸造業者の長い経験に基づいたものであるから、それなりに正確である。
副題は「自分を失わずにビジネスで勝つための52の真実」。。。。。ハーバード・ビジネス・レビューの編集者を経て、45才のときにパートナーとイノベーション、起業家論をテーマとした新しいタイプの雑誌ファースト・カンパニーを立ち上げたアラン。新著には約40年間にわたるキャリアから導き出した52の「智恵」が満載されています。
明日22日、当協会で行われる新著の出版記念講演会に先立ち、3月で行われたオンライン・インタビュー(英語ブログ)の一部日本語にしました。
Q:このような本を書くことになった動機を教えてください。昨年秋の金融危機以来、今までのビジネスの経験則が全く通用しなくなっている中で今回の本は非常に良いタイミングで出版される気がしますが。。。。
A:この本を書くことになったのは、ほとんど偶然の産物で少しだけ先見の明があったと言えるかもしれません。一年ほど前に大企業のCEOと重役50人を前にスピーチをしたときに、プログラムの最後にCEOが出席者全員に「今の米国で道徳的権限を持っている人は誰か?」と問いかけました。そこで皆シーンと静まり返ってしまったのです。きっとみんな頭の中でデータ検索をしてビジネスの世界、政府、宗教で一体だれが当てはまるか考えたと思うのですが、だれの名前もでてこなかったのです。そのときに私は、明晰なものの考え方や、究極的には仕事と生きるための新しいルールを生み出すための源が必要だと思ったのです。そう思った途端に私は、過去30数年にわたり - オレゴン州ポートランドで働いていた時代、ハーバード・ビジネス・レビューやファーストカンパニー誌時代、そして今わたしは自称「グローバルな探偵」として活動しているのですが - 貯めてきた記事、スピーチ原稿、エッセーが詰まっているファイルを見直しはじめました。そして私は今までに出会った卓越した人々と一緒に働き学んだことをまとめあげ、この本にしたのです。「経験則」がこの本のバックボーンとなっています。この時代が来るのをなんとなく予測していてこの本が生まれたという言い方もありますし、このような時代だからこそこの本が生まれたともいえます。
Q:ポスト情報化時代では、コンテンツではなくコンテクスト(文脈)の方が重要であるといっていますが、一方で新しいリアリティは新しいカテゴリーを必要していると書いてあります。過去数ヶ月の間に、世界経済が突然大きく変容し、コンテクストが変わってしまいましたが、このことがイノベーションや新しい価値の創出にはどのように影響を与えるのでしょうか?
A:過去30年を振りかえっても、米国そして世界でこれほど対話が求められている時代はないかと思います。旅行をすると、-一番最近では私はデンマークを訪れたのですが-人々が、昔からの問題をどのような新しい方法で解決できるかを話したがっているかがよくわかります。今までのやり方には制限されない方法により問題を解決しようと思っているのです。今ビジネス・イノベーションの世界では、また、ソーシャル・イノベーションの世界でもいえるかと思いますが、新しい方法で働き、生き、人生の意味を見出そうとしている動きがでてきていると思います。
Q: 経験則41では、「もしも本当のリーダーになりたいのであれば、本気でリーダーになることに取り組め!」とありますが、今日のリーダーに一番欠けている重要な素質は何ですか?
A:過去30年の間で、私のビジネス関係のメディアに対しての批判というのは、特にビジネスの世界で、偽りのイメージのリーダーを崇拝する傾向をつくった点です。有名人と同等に扱うような文化が生まれてしまったのです。もしもCEOが権力を持ち、お金持ちになり、有名になれば、それで十分だという考え方です。私がいままで一緒に仕事をしてきて一番印象に残っているリーダー達は、名声には全然興味がありませんした。彼らは、まず第一に自分たちの部下、次に組織、そして果たそうとしている使命に対して非常に忠実です。人生の中で私達は、自分のことしか考えていないリーダーと、協力してともに働こうというリーダーの違いを目の当たりにします。特に、金融危機(そしてこの金融危機は、名声とお金しかないリーダーのせいで起きたともいえます)と、世界的な社会・環境問題から同時に回復しようとしている中で、私達は全く違ったスタイルのリーダーを受け入れる必要があります。私は新著の中で、途方もないナルシストではなく、強力でしかも健康的なエゴをもったリーダーについて書きました。すべての問いに対する答えを持っていると思っているリーダーではなく、正しい質問を聞く術を持っているリーダー達です。自分がどんな集まりの中でも、自分が一番頭がいいと思っているのではなく、才能のあるチーム・メートをまとめ上げる力を持っているリーダーです。私達は往々にして、自分の最大の才能を引きだすことができるリーダーと、肩書きだけはあるのに、ちっとも正しい仕事ができないリーダーの両方のタイプのために仕事をしたことがあるかと思います。
Q私の好きな経験則は50番の「上昇線のときには、自分の強みに注意を払い、下降線のときには弱点に注意を払う。」このことは人、企業、産業、国すべてに当てはまることができるかと思います。現在の米国経済を鑑みて、オバマ大統領にはどんなアドバイスがありますか?
A:オバマ大統領にアドバイスを聞かれていないのですが、彼はコミュニティ・オーガナイザーのときにこの経験則についてはすでに学んでいるかと思います。コミュニティ・オーガナイザーというのは、自分よりも巨大で、資金力があって、強い敵対者の強みを逆手にとった政治的柔術の使い方を学びます。ですからオバマが米国の問題を解決するために国民に伝えていることは、昔からの価値を思い出させることです。自分の行動に責任を取り、真実を語り、憲法と法を遵守する。そのような米国の強みが無視され、あるいは輝きがなくなってしまい、弱みになってしまったと信じている人々がオバマ大統領のメッセージに共鳴するのは、本来の米国のあり方を思い出させるからです。国であろうと会社であろうと、自分たちの価値を知ることは、再建のためにとても重要なことです。物事を変える余地があるかないかを知ることが大事なのです。というのは、核の部分というのは変えることができません。書き直すことができないルールというのはあるのです。しかし残りの部分つまり問題解決の方法、新しい政策の立案、新しい製品やサービスの開発、物事が先に進むためのルールといったことは議論の余地があるのです。
アランの英文でのインタビューはまだ続きます。続きは、折をみて日本語に訳す予定です。アランの話はとっても面白いので明日の講演会が楽しみです! (Fumiko)